【花粉症・鼻炎】アレルギー性鼻炎・慢性鼻炎に対するボトックス治療のエビデンスについて

当院では、既存の治療では効果が不十分な方や、眠気などの副作用でお薬が飲めない方のために、新しい治療の選択肢として「ボトックス(ボツリヌス毒素製剤)」を用いた鼻炎治療を自由診療にて行っております。
こちらの記事ではこれまでの世界でのエビデンスをご紹介します。今回はイランの文献が多くなっていますが、アメリカや韓国など各地で使用、成果の発表がされています。

この記事のまとめ

ボツリヌス治療は花粉症に効果がある。
ただし、中途半端な量を投与しても効果は弱いし、効果の立ち上がりの遅さや高額な薬価のため既存治療よりもおすすめできるものではない。

既存治療とボツリヌス治療、どっちが優れている?

結論:
ボツリヌス治療は既存治療と同じぐらい効いたけどまずは既存治療を優先したほうが良いんじゃない?高いし。

Hashemi SM, Okhovat A, Amini S, Pourghasemian M. Comparing the effects of Botulinum Toxin-A and cetirizine on the treatment of allergic rhinitis. Allergol Int 2013;62:245–9. https://doi.org/10.2332/allergolint.12-OA-0510.

書評:

ボツリヌス治療とセチリジン(抗ヒスタミン薬)のランダム化比較試験を行っています。投与方法は鼻甲介への注射です。
日本のアレルギー学会の論文誌で採択されたものではありますが、臨床試験はイランのものですので、人種差や花粉症の原因抗原の差があることに留意する必要があります。また、リミテーションにも記載がありますが、ブラインド試験が難しいことや患者数が少なくベースラインの違いがあることについても言及されています。
結果はというと、眼症状も含めて全体に改善しており、セチリジンと同等の効果を示しています。一方でセチリジンには眠気の副作用頻度が多かったとされています。ボツリヌス治療については鼻血があったが、押さえれば止まる程度のものであったとしています。
そのため結論としてまずは抗ヒスタミン薬などの既存治療を、眠気などで忍容性が低い場合は第一選択肢にもなりうるだろうとしています。
ただし、当院でも使用することが多い新規の抗ヒスタミン薬は眠気の副作用がかなり軽減されているものも多く、44%の患者さんに眠気の副作用が出ることは既存治療では考えづらいかと思います。イランでは通貨安によりボトックス®の購入価が日本に比べて高いことも勧めづらい理由ではありそうで、その点については日本ではまだまし、といったところですが高額には違いないので、まずは既存治療を行うことを優先すべきと考えています。

溶解性ガーゼ浸潤法による投与の効果は?

結論:
ボトックスを浸したゼルフォーム®の留置による治療は出血が少なく、効果もあった。

Zand V, Baradaranfar M, Dadgarnia M, Meybodian M, Vaziribozorg S, Mandegari M, et al. The effect of gelfoam impregnated with botulinum toxin on allergic rhinitis. Iran J Otorhinolaryngol 2019;31:203–8.

書評:

ゼルフォーム®を使った浸潤によるボツリヌス治療の効果を見ています。
こちらもイランのものですので、人種差や花粉症の原因抗原の差があることに留意する必要があります。
上記の結果のように30例を対象として効果があることを示しています。一方で対照試験ではないために単純比較できないことに留意が必要です。
この論文で痛みの評価はされていないので何とも言えませんが、ゼルフォーム浸潤による治療は奥に留置する際に一定の痛みがあり、痛みに関しては注射とどちらが優れているか一概には言えない気がしています。出血を含む副作用については30人中0人として報告されていますが同じようにピンセットによる挫創などの出血リスクはあるため、症例数の問題はあるかもしれません。
日本ではゼルフォームの供給の問題や安くないゼルフォームの値段を転嫁するメリットがあるのかを検討する必要がありそうです。

スポンジ浸潤法による投与の効果は?

結論:
プラセボ対照のランダム化比較試験で効果が認められ、重篤な副作用も認めなかった。

Hashem S, Mojtaba A, Ali AKA, Ali OM. Botulinum toxin type A on an intranasal sponge for chronic allergic rhinitis: Randomized clinical trial. Iranian Rehabilitation Journal 2013;11:5–11.

書評:

ガーゼを使った浸潤(30分)によるボツリヌス治療の効果を見ています。
こちらもまたイランのものですので、人種差や花粉症の原因抗原の差があることに留意する必要があります。
しっかりと効果が出ているようです。この論文で特筆すべきは12週まで逐次経過を追っているところですね。美容のボトックスでよく言われる数日後から効き始めて2週間で実感できるといいますが、アレルギー性鼻炎の場合は2週間かけて症状は半減し、3ヶ月後にも効果が深まっているようです。慢性アレルギー性鼻炎に対してなので花粉が飛ばなくなったなどのシーズナリティの問題はないものと思いますが、イラン事情に詳しくないのでわかりません。

副作用や合併症のリスク

  • これまでの研究で、重篤な有害事象や合併症の発生は報告されていません。安全性は高い治療法と考えられています。
  • 報告されている軽度の有害事象としては、鼻の乾燥感(鼻水を止める効果が強く出る)、灼熱感、軽度の鼻出血などがありますが、いずれも一時的なものです。
  • 一般的なボトックス治療と同様に、短期間で継続的・反復的に使用することで、ごく稀に効果が弱まる(抗体ができてしまう)可能性が指摘されています。
  • 加齢に伴う鼻の乾燥感が増悪する等の副作用が持続する可能性は原理上考慮されます。
  • 以下に記載の通り使用できない方がいます。

対象となる方・治療を受けられない方

  • 対象年齢: 原則として成人(18歳以上)の方が対象です。
  • この治療を受けられない方:以下に当てはまる方は、ボトックス治療を受けることができない場合があります。安全のため、必ず事前に医師にお知らせください。
    • 全身性の神経筋接合部の疾患(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群など)をお持ちの方
    • 妊娠中の方、妊娠の可能性がある方、授乳中の方
    • 過去にボツリヌス毒素製剤でアレルギー反応(発疹、じんましん、呼吸困難など)を起こしたことがある方

話だけでも聞いてみたい方やご質問やご不明点がある場合なども、どうぞお気軽に医師にご相談ください。


※花粉症に対するボツリヌス治療は、医薬品医療機器等法上、未承認の医薬品です。
※同程度の効能・効果で承認されている国内承認医薬品として、アラガン社のボトックスビスタ®がありますが、同薬剤も花粉症に対する承認は得ておりません。
※韓国製ボツリヌス薬剤はMFDS(韓国食品医薬品安全処)でボツリヌストキシン製剤として承認されており、重大な副作用の報告はありません。
※花粉症に対するボツリヌス治療は日本では未承認医薬品のため、医薬品副作用被害救済制度の対象外です。

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